明日葉

Strain代表 鈴木 麻理奈さん×学童クラブ施設長 遠藤 諒子さん
【特別対談】 学童での音楽体験を通して、こどもたちの感性を育む

今回の対談企画には、作曲家であり、株式会社Strainの代表取締役社長の鈴木麻理奈さんをお迎えしました。鈴木さんは、今年2月に、都内の学童クラブで「サウンドクリエーター体験教室」を開催してくださりました。

とっても盛り上がったサウンドクリエーター教室でしたが、作曲家としてテレビ番組へも楽曲提供を行っている鈴木さんがどうしてこどもたちへの体験の機会を大切にしているのか、その想いや背景を、教室を行った学童の施設長・遠藤さんと、対談という形でお話伺いました。


<対談>
株式会社 Strain 代表取締役社長 鈴木 麻理奈さん

作曲家、プロデューサー、チャイルドコーチングアドバイザー。国立音楽大学演奏学科電子オルガン専攻首席卒業および作曲応用コースを卒業。同時に武岡賞受賞。NHKや日テレといったTV番組やSONYなどの企業CMに楽曲提供を行う。また、きゃりーぱみゅぱみゅといったアーティストへのライブ時の演奏指導なども行う。年間3,000曲以上のBGMの制作に携わり、アップルミュージックJAZZチャートで1位を獲得するなど、癒し系や作業系のBGM制作も得意とする。

株式会社明日葉 目黒区本町学童保育クラブ 施設長 遠藤諒子さん

中途採用で入社8年目。東京都北区や渋谷区の施設で勤務した後、現在は目黒区本町学童保育クラブで施設長を務めています。目黒区の保育理念の一つである“つながり”を大切に、子どもたちの可能性にいつもわくわくしながら保育をしています。

<進行>
・株式会社明日葉 インキュベーション事業部 部長 平野 昌智さん


プロが教えてくれるサウンドクリエーター体験教室に、みんなワクワクしていた

平野さん

それでは改めて、ストレインさんが学童で教室をされたのは初めてだと思いますが
開催していただいて、こどもたちの反応はいかがでしたか?


鈴木さん

そうですね、やっぱり授業が始まる前はこどもたちすごく賑やかだったんですけど、いざ私が準備をし始めると、「何しているの」と、ワクワクした様子で近くに寄ってきて、準備を手伝ってくれました。



遠藤さん

こどもたちは始まる前から、「すごい人が来てくれるんだね!」と楽しみにしている感じでした。やっぱりプロの人に教えてもらえるというのが、すごく嬉しいみたいで。


みんな作曲家の仕事に興味を持っていたんです。鈴木さんが「学校のチャイムも作曲家が作ったものなんだよ」と教えてくださると、すごく驚いている様子で。こんなに身近な音も作曲家が作っているんだ!という新たな発見というか、ちょっと視野が広がったのかなっていう様子がありました。


平野さん

良い反応ですね!実際に曲作りが始まってどうでしたか?


鈴木さん

本当に集中して取り組んでくれて、さっきまで賑やかだった子と同じ子?みたいな感じで(笑)。その子の違う一面が見られているなという感覚になりました。


遠藤さん

普段なかなか席に座っていられない子もいるんですが、その時間はすごく集中して取り組めていました。時間が終わっても「もっとやりたい!」と言うくらい夢中になれたみたいです。


鈴木さん

作品も個性があって、誰一人として同じ作品がないんですね。一人ひとり「こういう音楽を作りたいんだ」みたいなイメージがあるようで、それに向かって作っていく姿が印象的でした。

「こういう音はどこにあるんですか?」とか、「この機能はどう使ったらいいですか?」とか、積極的に質問をしてくれて、こどもの主体性を感じる時間だったなという風に振り返ります。


遠藤さん

発表の時間では、一人ひとり作った曲を流して発表したんですが、びっくりしたことに、誰かが音楽を流すたびに拍手が起こるっていう(笑)。

こどもたちは「みんな違うけど、全部いいじゃん」と言っていて、お互いに認め合っているのかなというのが伝わってきました。



平野さん

教室が終わってからは、何か変化はありましたか?


遠藤さん

保護者の方にも興味を持ってもらえて、「作曲できるってどんなアプリですか」とか「家でやってみました」というお声もありました。教室をきっかけに、親子の間で会話が生まれたり、楽しいから家でもやってみようと思ってくれたことに嬉しく思いましたし、今回の体験によってこどもたちの世界が広がったんじゃないかなと思います。


学童での音楽体験で非認知能力を育む

平野さん

ストレインさんは、どういったきっかけで「サウンドクリエーター体験教室」を始められたのかお伺いできますか?


鈴木さん

最初は作曲家という職業をこどもたちに体験してほしいというところがきっかけでした。そこから、こどもたちの人間力、非認知能力を伸ばすという、ストレインの会社の軸ともつながり、音楽スキルだけでなくその子の人間性とか、コミュニケーション能力とか、想像力とか、感性とか、そういうところを、音楽を通して身に着けて、育んでほしい、そういう想いでこのプログラムを提供するようになりました。



鈴木さん

従来の音楽教室だと、どうしてもスキルを高めていくものが多くてですね、音楽をやるとなると、まず練習。練習につまずいてもう嫌になっちゃうみたいな子も多いんです。

もちろんスキルを高めていくのも大事ですけど、それ以外の音楽の良さっていうのもあって、それがやはりイマジネーションとかクリエイティビティの部分なんですね。

サウンドクリエーター体験教室は、練習が一切必要ないんですよ。感性でできるので、誰でもチャレンジできて、ある程度形になるっていうところが魅力です。


遠藤さん

正解不正解がなくて、こんな音が好きっていう感性から作り上げていけるのが良いなと思います。

それがこどもたちの「自分ってこんなこともできるんだ」、「こんなものが好きなんだ」という新しい自分の発見や興味の広がりにもつながって、そしてそれを披露することでお互いに認め合い、こどもたちの成功体験にもつながったと思います。


こどもたちにさまざまな体験の機会を

平野さん

実は学童の課題でもありますが、現場の職員ができる工作や遊びだけでは体験の幅に限界があるなと。ストレインさんのような企業とコラボレーションすることによって、プロの方から何かを学べたり、色々なお話ができたりする機会をつくってあげる。そうすると、こどもたちの次のステップにもつながるんじゃないかと感じています。


遠藤さん

私も施設長として大事にしていることは、こどもの利益につながるかというところです。学童でこどもの利益になるってなんだろうと考えたときに、こどもたちに色々な経験をさせてあげることが第一に出てきます。こどものうちから色々な経験をして色々な情報に触れて、将来の可能性を広げていってほしいなと思います。


平野さん

施設として、今後こういう取り組みもできたらいいなというものはありますか?


遠藤さん

今回の教室にきっかけをいただいて、やってみたいことがたくさん生まれました。こどもたちはやっぱり、「これも作曲家の人が作った音楽なんだ!」というのが心に残っているようで。“身の回りの音探検”のようなイベントをして、拾ってきた音を発表するのも楽しそうだなと思っています。

あとは、作曲アプリの使い方を教えていただいたので、みんなで曲づくりの続きを行ってみたり、その曲に合わせたダンスをしてみたり…。それを保護者様の前で発表するのもいいなと思っています。こういうきっかけをいただいた以上、こどもたちと一緒に何か発展させて、形にしていけたらいいなと思っています。



平野さん

ストレインさんとしては、今後未来を担うこどもたちに向けてどのような取り組みをしていきたいですか?


鈴木さん

不確実性が高いと言われているこれからの時代、こどもたちには先を見通す、イメージする力が必要だと思います。それはやはり感性の部分が大きいと思うんですよね。教えられて、暗記するといった認知能力と、クリエイティビティとかイマジネーションという非認知能力の両方が必要になってきていて、非認知能力のところは、音楽によって十分伸ばしていくことができます。

そういう面で、音楽を通してこどもたちに貢献していきたいなと考えています。


平野さん

ストレインさんとはサウンドクリエーター体験教室だけでなく、学童でプロの音楽家によるミニコンサートを開催することも予定していて、今後も色々な企画をお願いすることになると思います。

学童や児童館などでイベントを行うとき、これまではこちらから施設にお願いすることが多かったのですが、この対談をきっかけに、イベントの背景や企業の方のこどもたちへの想いを知ってもらうことで、共感してくれる施設からどんどん声が上がったら嬉しいですね。

今後も色々な企業様のお力をお借りしながら、こどもたちにさまざまな体験の機会を提供していきたいと考えています。