葉隠勇進株式会社 板橋区内にある小学校の給食現場 責任者 大久保 美穂さん
四季折々の明るくかわいらしい装飾と、食について楽しく学べる掲示が貼られた小学校の給食室前。装飾と掲示を手掛けたのは、普段は給食調理を行う調理員さんたちです。給食を提供するだけではなく、児童たちに食の楽しさや学びをもたらす場となっている、こちらの学校の給食室。責任者の大久保さんにお話を伺うと、装飾や掲示に込められた児童たちへの想いが見えてきました。
――給食室前の装飾がとても素敵ですね。装飾に力を入れている理由を教えてください。
この学校の給食室は、中の様子が外から見えない造りになっているんです。だからこそ、給食室の周りをきれいに飾って、児童たちに「給食室の中は明るくて楽しい場所なんだ」と感じてもらえることを目指しています。
装飾は遊び心を大切にしていて、例えば運動会の時には、玉入れの玉に磁石を取り付け、児童たちが動かしてかごの中に入れられるよう工夫しました。みんな楽しそうに遊んでくれていましたね。今月の装飾は、7月なので海をイメージして、たくさんの魚を泳がせてみました。児童からも「夏っぽくていいね」と好評です。
――入学式の時のランドセルの装飾もかなり手が込んでいましたよね!
そうなんです!ランドセルの縫い目、留め具、中の仕切りなど、細かいディテールにまでこだわって作った自信作です。ランドセルの中には、「こくご」「さんすう」など教科ごとのノートを入れて、ノートの中には児童たちに向けたメッセージを書きました。給食ワゴンと一緒に届けたら、教室にずっと飾ってくれているみたいでとても嬉しいです。
――どのように装飾のアイデアを出されているんですか?
Pinterest(写真共有サービス)を使って、アイデアやイメージを膨らませています。季節ごとの工作の写真がたくさん掲載されているので参考になりますね。
調理員みんなでアイデアを持ち寄って、来月はどんな装飾をしようかと決めています。「次はこういうのしたいんです!」と、みんな積極的にアイデアを持ってきてくれますね。
――調理業務でも忙しい中、どのように制作の時間を作っているのでしょうか?
調理が早く終わった日に退勤までの時間を使うなど、隙間時間を活用しながら、何日かかけて制作しています。
――周囲からの反応はいかがでしょうか?
児童は装飾を見てよく声をかけてくれますね。先生方も興味を持ってくださって、「この装飾、工作の参考にさせてもらってもいいですか?」と声をかけていただいたこともあります。あとは装飾を使ってクイズを出すこともあって、児童が下膳のときに「クイズの答え分かったよ!」と教えてくれることもあります。装飾をきっかけにコミュニケーションが生まれて、給食室前がみんなで楽しめる交流の場になったら良いなと思っています。
――食育の掲示にも力を入れていますよね。
はい。実は同じ小学校の学童も私たちのグループが運営しているので、学童との共同企画として、一緒に食育の掲示物を作成しています。児童たちがもっと給食に興味を持てるように、どのような掲示を作ればいいか話し合いながら進めています。
例えば東京オリンピック・パラリンピックの時には、オリパラ給食として世界の料理が献立になっていたので、学童ではその国にまつわるクイズを作ってくれました。私たち給食室からは日本の郷土料理にも目を向けてほしいと思い、給食で提供された郷土料理とそれにまつわる食文化を紹介しました。例えばけんちん汁を紹介したときには、関東と関西のつゆの違いについて説明しましたね。
今月は学童で、五大栄養素についてキャラクターを交えながら紹介する掲示を作成してくれました。給食室では、給食で出た食べ物について、都道府県別生産量ランキングを作成しました。例えば6月と7月はメロンとすいかが給食で出たので、それぞれの生産量が多い都道府県TOP3を紹介しましたね。
この小学校の給食室は玄関のすぐ近くにあるため、児童を迎えにきた保護者様も掲示を見てくださるんです。保護者様と児童が掲示を見ながら一緒に話している姿もよく見かけて、とても嬉しい気持ちになりますね。
また、人気のある給食献立はレシピを提供し自由に持ち帰っていただけるようにしています。こちらも好評で、たくさんの保護者様が持ち帰ってくださっていますね。
――大久保さんにとって、学校給食とはどのようなものでしょうか?
児童たちが必要な栄養を取ることはもちろんですが、食事の中に楽しみを見つけてほしいと思っています。食についての知識を深めたり、食卓の雰囲気を楽しんだりすることで、食事自体が楽しくなりますよね。心にも良い影響を与えることが、給食の目指すところだと思っています。 学生時代の給食の話って、大人になっても盛り上がりますよね。そんな風に、児童たちの思い出に残るような給食体験を提供していきたいと思っています。