インタビュー×学校給食

【学校給食食育インタビュー】オンライン授業からポスター制作まで。給食センターの調理員さんが切り拓く新たな食育のアプローチ

葉隠勇進株式会社 つくば市内にある学校給食センターの現場 責任者 金澤(かなざわ) 久美子(くみこ)さん

つくば市内の学校給食センターで責任者を務める金澤さんは、現場で働く調理員さんならではの視点から、小学校での食育活動を展開しています。ここ数年、コロナ禍で学校訪問が難しい状況が続きましたが、金澤さんはオンライン授業やポスター制作など、新しい食育の形を積極的に提案してきました。そんな金澤さんに、調理員として食の情報を発信し始めたきっかけやその想いについて伺いました。

金澤さんが取り組んだ食育の内容は、こちらからご覧ください。

【学校給食現場から】給食センターの調理員さんたちが取り組んだ食育事例をご紹介 | 学校給食の受託会社:葉隠勇進株式会社
「学校給食現場から」では、なかなか見ることのできない葉隠勇進の学校給食現場の様子をお届けしています。 今回はコロナ期間中、給食の提供を一時停止していた際に、給食センターの調理員さんが一丸で取り組んだ食育事例をご紹介。こど

――まずは、オンラインで食育の授業を始めたきっかけについて教えてください。

新型コロナウイルスの影響で、毎年行っていた学校訪問が中止になったことがきっかけです。以前は小学1年生を対象に、給食センターでは毎日2,400食作っていることを説明し、スパテラなど調理器具を持参して見せていたんです。1年生は、「おうちのお玉と大きさが全然違う!」と驚き、給食調理にすごく興味を持ってくれました。

でも、コロナ禍で学校が休校となり、給食の提供も一時中断してしまいました。その状況下で、児童たちに何かできることはないかと考えていたんです。その時、学校の授業がオンラインになるという情報を耳にし、「学校訪問で伝えていた内容をオンラインでも発信できるかも」とひらめきました。栄養士の先生にご相談したら、「ぜひやってみてください!」と応援のお言葉をいただき、資料を作り始めました。

パワーポイントを使って、下処理から調理作業、学校へ配送されるまでのプロセスを文章と写真で詳しくまとめました。児童たちと直接お話ができれば良かったのですが、オンライン授業に立ち会うことは難しかったので、音声を自分で録音して挿入しました。

児童たちはおうちで保護者様と一緒に観てくれたんです。保護者様からも「給食ができるまでが、すごくよく分かって良かったです」と感想をいただけたのは嬉しかったですね。

――オンライン授業に続いて、「葉隠通信」というポスターも制作されたと聞きました。内容はどのようなものでしょうか?

学校が再開してからも、しばらくは児童たちとの交流が制限されていました。そんな状況の中で、オンライン授業に続いて何か新しい試みができないかと考えて、給食室からポスターを制作して発信してみることにしたんです。

第1弾 葉隠通信「カレーができるまで」

第1弾は、人気メニューであるカレーの調理過程に焦点を当てました。例えば「約100個分のじゃがいもをピーラーで皮剥きします」とか「1つの回転釜で800人分のカレーを作ります」といったように、数字と写真を使って分かりやすく紹介しました。おうちで作る量とは全く違う大量調理の様子をイメージしてもらえるように工夫しましたね。

――第2弾の葉隠通信も発行されたとのことですね。どんな内容ですか?

いつも袋に入った状態で納品される“なめこ”に私自身がどうやって栽培されているのか興味を持ったのがきっかけで、なめこが生産される様子を紹介してみようと考えました。

なめこの生産者さんは同じつくば市にいらっしゃるんですけど、直接お会いしたことはありませんでした。そこで、栄養士先生を通じて取材をお願いしてみたところ、快く受け入れてくださいました。

第2弾 葉隠通信「なめこができるまで」

取材では、菌糸からなめこを育てて収穫するまでの流れを見せていただきました。菌が発生したばかりの赤ちゃんなめこって、すごくちっちゃいんですよ。なめこの成長過程を見学しながら説明を伺い、生産者さんの熱い思いを感じました。見学中はビデオや写真を撮りながら、「わあ、すごい!」と声が漏れるほどでした。

給食調理も大変ですが、生産者さんも手間暇かけて食材を作っていることが分かり、児童たちにもそれを感じてほしいという想いで、葉隠通信第2弾をまとめました。私たち調理員も、より一層心を込めて調理する意欲が湧きましたね。

――児童たちからはどんな反応がありましたか?

葉隠通信を読んだ児童からは、「毎日食べている給食がこうやって作られているんだと、よく分かりました」「いつもおいしい給食をありがとうございます」「残さず食べます」といった声をもらって、児童たちの給食への関心が高まったことを感じました。

葉隠通信はセンターで給食を作っている7つの学校に向けて、1枚ずつ手作りで制作しました。そして、各校へお邪魔して直接お渡ししたんです。葉隠通信をホームページで紹介してくださった学校や、綺麗にラミネートして掲示板に貼ってくださった学校もあって、とても嬉しく思いました。

――金澤さんにとって、学校給食とはどのようなものでしょうか?

安全・安心な給食を提供することはもちろんですが、給食を通じて児童たちの笑顔をたくさん見たいと思っています。そして、こどもたちが大きくなってからも思い出せるような思い出に残る給食体験を提供したいという想いが強くあります。

今後は、栄養満点な給食を残さず食べてもらえるよう、残食を減らす取り組みにも力を入れたいですね。葉隠通信第3弾では、児童たちが苦手な野菜の栄養素について紹介したいと思っています。給食を通じて児童たちの元気な体作りに貢献できたら嬉しいです。