現場力×保育園

「FSCマーク」を探して森を守ろう!こどもたちの学びを深めたSDGsの現場力とは

現場力作成者:株式会社あしたばマインド 明日葉保育園池袋園 綱島(つなしま)(あずさ)先生

池袋園年長クラスのこどもたちは、異文化体験プログラム「あしたばドア※」を通じて森にまつわる環境問題に興味を持ちました。同じ時期に森にやさしい製品を示す環境ラベル「FSCマーク」について知ったこどもたちは、このマークがどんな商品に付いているかを理解するため、保護者様と一緒にFSCマークを集め始めました。こどもたちの興味を引き出し、深い学びと行動変容へとつなげていった今回の取り組みについて、担任の綱島先生にお話を伺いました。

※あしたばドア:SDGsを体験できる参加型の動画プログラムとZoomを活用したライブでの国際交流を組み合わせた、明日葉保育園独自の異文化体験プログラム(https://www.ashita-ba.jp/features/program/ashitabadoor/


――今回の現場力が誕生したきっかけについて教えてください。

「あしたばドア」の事前学習として、交流する国のSDGsについて、写真を交えながらこどもたちに伝えていたんです。その中から、こどもたちは森林に関する問題に特に興味を持ちました。オーストラリアの森林火災でコアラが3分の1も死んでしまったことや、中国で森を伐採した結果、黄砂が街に飛んでくるようになって洗濯物が干せなくなってしまったということを説明すると、心に大きく残ったようでした。

同じタイミングで、地域で行っていた「ゾウの生態を知ろう」というイベントにみんなで参加しました。そこで「ゾウさんは森に住んでいる生き物だけど、森の木々が伐採されることで、住む場所がなくなってきているんだよ。だから木を大切にしましょうね」と伝えられ、FSCマークがついた学習帳をいただいたんです。

「FSCマークがついているものは、森にやさしいものなんだよ」と教えてもらったときに、「あしたばドア」を通して学んだことがこどもたちの中でつながったようです。「このマークがついたものを選べば、森を守れるんじゃないか。コアラを守れるんじゃないか」と考え、FSCマークに興味を持ち始めました。

FSCマーク

――こどもたちの興味から始まったんですね。

そうなんです。園に届いた段ボールにFSCマークが付いていることに気が付き、「段ボールにも付いているんだ!」「段ボールも木からできているもんね」と、こどもたちと盛り上がったこともありました。

そのようなことが続き、ある日、家で見つけたFSCマークを持ってくる子が現れたんです。彼の行動をみんなにも注目してもらいたいなと思ったので、朝の会の時間に、FSCマークがどこに付いていたのか、みんなの前で発表してもらいました。

その姿が周りの子たちの刺激になったようで、みんな至るところでFSCマークを見つけては持ってきてくれるようになりました。そこで、こどもたちと一緒に回収ボックスを作って、本格的に集めてみることにしたんです。

FSCマーク回収ボックス

――FSCマークはどれぐらい集まったんですか?

2週間で80個も集まりました!たくさん集まったので、FSCマークがどんなものに付いていたのかカテゴリーごとに分類して、こどもたちと一緒に一覧表を作ってみました。すると、FSCマークが食べ物や飲み物の箱に多く付いていることや、特定のブランドの商品に付いていることが分かったんです。それを知ったこどもたちが、「この豆乳の箱にマークが付いているから、この豆乳を買ってほしい!」などと、保護者様にお願いしていると聞きました(笑)。

FSCマーク一覧表を作るこどもたち

――FSCマークを集めてみて、こどもたちに何か変化はありましたか?

紙が木からできているということを知ったので、手洗いの後に手を拭く時「一枚でも十分拭けるね」と、ペーパーを使う量がそれまでよりぐっと減りましたね。いつもたくさん使っていたお絵描きの紙も、「1枚全部には描ききれないから」と半分に切って使ったり、塗り絵を最後までしっかり塗って、その裏面にお絵描きしたりと、紙を大切にする姿が見られるようになりました。

また、回収が終わった今でも日常的に、保護者様にFSCマークが付いている商品を選ぶようにお願いしていると聞いています。

完成したFSCマーク一覧表

――今回の取り組みのきっかけとなった「あしたばドア」の事前学習は、どのように行っているんですか?

最初は事前学習として、交流する国の有名なものや観光地についてお家で保護者様と一緒に調べてきてもらっていました。取り組み始めたばかりの頃は保護者様が書いてくださったものを持ってくるだけだったのですが、続けていくうちにこどもたちが自分で字を書いてきたり、図書館に行って親子で調べてきたりと、だんだん力を入れたものになっていったんです。

私もこどもたちに負けてられないなと思い、もう少し学習を深めようと、その国はどんなSDGsの取り組みをしているのか調べて紹介したり、その国の環境問題についての写真を印刷してこどもたちに見せたりと、力を入れていったんです。

「あしたばドア」を終えた後の事後学習というのも行っていて、「この国の取り組みはSDGsの目標の何番だろうね?」と、SDGsの表を使いながらこどもたちに問いかけていました。それを続けていくうちに、事前学習の段階でこどもたちのほうから、「この国はSDGsの何番を頑張っているよ」と先取りして調べて教えてくれるようになったんです。

――素晴らしいですね。今回の現場力に取り組んでみて、いかがでしたか?

私自身も一歩踏み込んだ学びになりましたし、こどもたちもすごく興味を持って取り組んでくれました。保護者様もとても協力してくれて、「捨てようと思っていた段ボールにFSCマークが付いていたから持ってきました」と言ってくださったり、何に付いていたものか分かるように説明を書いて持ってきてくださったりしたんです。家庭も巻き込んだ取り組みができたことは本当に良かったですね。

現場力って、何か新しいものを探してレポートを提出しなきゃということではなく、日々保育を良くするために自分は何をやっているかなと振り返ると、意外とたくさんあると思うんですよね。ささいなことでも気負わず楽しく取り組んでいくと、自然と改善につながっていくものだと感じています。