現場力×保育園

SDGsをもっと身近に!こどもたちの日常生活に取り入れた保育園のアプローチとは

現場力作成者:株式会社あしたばマインド 明日葉保育園大山園 須貝(すがい) 祐美(ゆみ)先生

明日葉保育園では、異文化体験プログラム「あしたばドア※」の中で、こどもたちがSDGsについて学んでいます。須貝先生は、プログラムの中だけでなく、こどもたちの日常生活にSDGsをどう取り入れていくかを課題に感じていました。そこで、小さなことでも良いからSDGsに関することを行ったとき、それを付箋に書いて共有する仕組みを作りました。このアイデアによって、こどもたちにどのような変化が起こったのか、須貝先生にお話を伺いました。

※あしたばドア:SDGsを体験できる参加型の動画プログラムとZoomを活用したライブでの国際交流を組み合わせた、明日葉保育園独自の異文化体験プログラム(https://www.ashita-ba.jp/features/program/ashitabadoor/


――今回の現場力が誕生したきっかけについて教えてください。

「あしたばドア」では交流する国のSDGsについて学んでいますが、「世界の海を救おう」「川を守ろう」といった話が出てきても、こどもたちが自分たちの問題として捉えるには大きすぎるかなと思っていました。こどもたちに聞いてみると、やはり「難しい」とか「何をしたらいいか分からない」という意見が多くて。では、日常の中でSDGsについて考えたり取り組んだりするにはどうしたらいいかなと、こどもたちと一緒に考えるようになりました。

その中でも、おうちでSDGsについて話したりとか、電気をこまめに消したりとか、少しずつやってくれている子はいたんですよね。それがみんなに広まったらいいなと思っていました。こどもたちからも「友達がどんなことをしているか知りたい」という声が出たので、小さなことでもいいから日常でやっていることを共有していこうかという話になりました。

――そこから、ボードを作って、取り組んだことを付箋で貼っていくようになったんですね。

年長クラスでは、その時期ひらがなの練習をしている子が多くいて、読んだり書いたりすることが好きだったんですよね。なので、こどもたちに書いていってもらうのがいいかなと思っていました。私からは「どうしようか」と投げかけたり、「こんなのあるよ」って付箋を用意したりしましたが、ほとんどこどもたちから主体的に「こんな風にやりたい」って進めていましたね。

――例えばどのようなSDGsの取り組みが付箋に貼られていったんですか?

最初は「水を止める」とか「電気を消す」とか簡単なものが出てきました。でも、だんだんそればかりになっていったんですよね。そこで、「お家の人に、どんなことをやっているか聞いてきてごらん」と伝えました。すると、保護者様から「こういう分別をしています」とか「環境にやさしいものを選んでいます」とか、取り組みがたくさん出てきて。「割れちゃった風船を人形のお洋服に変えました」みたいな面白い話もありましたね。

――保護者様から新しいアイデアがたくさん出てきたんですね。

でも取り組みを続けていくうちに、また新しいものが出なくなってきました。「もっと取り組みを知りたいけど、どうすればいいかな」とこどもたちと話し合って、他のクラスの子やその保護者様にもビラを配って協力してもらうことになりました。

こどもたちが手作りでビラを作り、「今こんな活動をしていてこんなことに困っています」というのを頑張って書きました。こどもたちからビラを配布したところ、他のクラスの保護者様もたくさん書いてくださるようになって。他のクラスのこどもたちも「私もやりたい」と参加してくれて、園全体で取り組むことができましたね。

付箋はいつでも誰でもボードに貼れるようにしていたので、そのボードを毎日見に行っては、「今日はこんなのが増えたね」「これなら真似できそうだね」「どんどん増えていくのが嬉しいね」などと、こどもたちと話していました。

ビラを配る様子

――取り組みを通して、こどもたちに変化はありましたか?

SDGsが特別なものじゃなくて、身近なものになったと感じます。「何か新しいことを紙に書きたい」「みんなに知ってほしい」という気持ちから、できることを自ら見つけたり、保護者の方に「何か新しいSDGsないかな?」と相談したりする姿が見られましたね。

この前卒園した子が遊びに来てくれて、「“これSDGsだね”と小学校の先生に話したらすごく褒められた」と教えてくれて。卒園しても、SDGsを日常のものとして考え続けてくれているんだなと嬉しく思いました。

今までだったら「電気を消す」「水を出しっぱなしにしない」みたいな日常のことが、どうSDGsに結び付いているのか分からない様子でしたが、取り組みを通じて、色んなものに目を向けて「これもSDGsだね」と自ら結び付けられるようになっていて、すごく成長を感じましたね。

――最後に、現場力に取り組むにあたって、大切にしていることがあれば教えてください。

現場力レポートを提出しなきゃいけないから考えるというよりも、行っていた取り組みの中で、他の園でも参考にしてもらえたらいいなと思ったものをレポートにまとめています。

取り組みに関しては、こどもの興味関心を一番に考えています。SDGsについて学んでほしいなとか、もっと伸ばしたいというこちらの気持ちはもちろんあるんですけど、こどもたちが興味を持てなければやりません。もちろん保育士として興味を持たせるような働きかけはしますが、やはりこどもたちやクラスの特性によって興味関心は変わるんですよね。今回の取り組みは年長クラスがSDGsに興味を持ってくれたので、こどもたちと一緒にここまで発展させることができました。 今は2歳児クラスを担当しているので、興味関心ももちろんですが、こどもたちがいかに快適に過ごせる環境を作れるかということを意識しています。常にこども中心に考えていくということを大切にしていますね。