現場力×保育園

【現場力インタビュー】子どもたちの安全・安心のために、保育士全員で取り組む調乳時のアレルギー対応

寺尾先生(左)と二宮園長(右)

現場力作成者:株式会社あしたばマインド 明日葉保育園第二戸塚園 寺尾(てらお) (ゆず)先生・二宮(にのみや) ()弥子(やこ)園長

ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。

保育園では、食物アレルギーへの対応としてさまざまな取り組みが行われています。明日葉保育園第二戸塚園は、アレルギー児の情報を園の先生全員で共有することで、安全・安心に対応できる仕組みを整えています。

0歳児クラスの寺尾先生は、ミルクをあげるときにどの先生が担当してもアレルギー事故につながらない、子どもの命を守るための現場力に取り組みました。二宮園長にも加わっていただき、詳しくお話を伺いました。

――今回の現場力が誕生したきっかけについて教えてください。

二宮 珠弥子園長(以下敬称略):乳アレルギーのある0歳児への授乳がきっかけでした。ミルクを飲む段階の赤ちゃんのアレルギー対応は数年ぶりで、経験がある先生がほとんどおらず、改めて丁寧に対応しなければならないという緊張感がありました。

まずは担任の寺尾先生と保護者様で面談し、具体的な症状や、ご自宅で飲んでいるアレルギー用の粉ミルクなどをしっかり聞き、それを他の先生たちにも共有しました。

寺尾 柚先生(以下敬称略):アレルギー児用のミルクを入れる哺乳瓶は他の子と分けて取り扱います。哺乳瓶は、哺乳瓶用乳首、キャップ、フタに分解することができ、洗浄時は部品を全て分解しています。そのため洗浄時に、アレルギー児用の哺乳瓶の部品と他の哺乳瓶の部品が入れ替わらないように注意が必要です。万が一、他の哺乳瓶の部品と入れ替わってしまうと、ミルクをあげたときにアレルギー症状が出てしまうかもしれません。

哺乳瓶の洗浄や授乳は他の先生たちと交代で行うため、誰がやっても絶対にミスが無いようにする必要があります。そこで、アレルギー児に使う哺乳瓶の「部品一覧表」を作ったのが今回の現場力です。

――具体的には、どのように一覧表を作成したのでしょうか?

寺尾:アレルギー児用の哺乳瓶の部品を撮影し、一覧にして掲示しました。哺乳瓶を洗うときや組み立てるときに、この表を見ながら一つ一つの部品に間違いがないか確認します。

他にも、ミルクをあげた時間や担当した先生を記録する『調乳記録簿』では、アレルギー児の記録には特に注意を引くように色を付けました。また哺乳瓶に付ける園児の名札は、アレルギー児用のものは色付きにして分かりやすくました。

アレルギー児用哺乳瓶の部品一覧表(中央)
他にも園児別にミルクを飲む量を一覧にした調乳量一覧表(左)、「調乳記録簿」(右)などで管理

――その後、子どもたちの成長に合わせて対応を変えられることもありましたか?

寺尾:そうですね。今はミルクを飲んでいたアレルギー児が卒乳し、離乳食が始まりました。離乳食のアレルギー対応として、毎日献立に乳製品があるか、調理室と確認し合っています。乳製品がある場合は、誤配膳を防ぐために必ず他の子よりも先に配膳するといった対応をしています。

二宮:ミルクも離乳食も、安全のために必ず二重、三重にチェックをした上で提供するようにしています。

――園では普段、どのように現場力に取り組んでいますか?

二宮:先生たちには「『物の位置を変えた』くらいのささいなことでも良いから提出してみよう」と伝えています。本人が日頃から何気なく行っていることでも、レポートにして他の先生に共有できたら、新たな気付きになるかもしれませんからね。

あとは、これまで園の先生たちが提出してきた現場力レポートは、全てファイリングして保管しています。新しい先生が入社したときは、まずそのファイルを見てもらい、現場力とはどういうものなのか学んでもらいます。先輩たちのレポートを参考にしながら、いずれは自分自身でも課題を見つけ、改善してもらうことを目指していますね。

――最後に、お二人が現場力において大切にしていることを教えてください。

寺尾:現場力に取り組み始めたらすぐにレポートを提出するのではなく、しばらく子どもたちの様子を観察してからレポートにまとめるようにしています。そのほうが、現場力の効果が顕著に表れ、取り組みの振り返りがしやすいと思うからです。

二宮:私一人が困っていることよりも、他の先生たちの「困った」という声を拾って改善することを意識しています。その結果、園の先生たちみんなが過ごしやすい職場だと感じてくれたら良いかな。

先生だけでなく、保護者様にとっても安心できる園にしたいと思っています。アレルギーのように、子どもに関するデリケートなことを保護者様にお伝えしなくてはならない場面は多くあります。そのようなときに保護者様に信頼していただくためにも、日頃のコミュニケーションの積み重ねを大切にしています。