現場力作成者:葉隠勇進株式会社 さいたま市内の小学校の給食現場責任者 杉田直樹さん
ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
杉田 直樹さんが責任者を務めるさいたま市内の小学校の学校給食現場で、ブラウニーが初めて献立に登場することになりました。当初は、およそ1,000個分の作ったことのないメニューを「時間通りに安全に提供できるか」という不安があったため、試作をする中で話し合いながら一つ一つ解消していきました。
「現場力に取り組むことは、毎日何か改善できるところを見つけようとすることなので、良い緊張感が持てます」と語る杉田さんと、試作の中心的役割を務めたサブチーフの浅野 祐子さんにお話を伺い、加えて荒川 ナパットさん・沖田 真記さんにも現場力への想いをお聞かせいただきました。
――今回、ブラウニーの試作に取り組んだのはなぜですか?
杉田 直樹さん(以下敬称略):ブラウニーを一から手作りして提供することが初めてだったので、まずは遅配にならないようにどう時間配分をすれば良いか不安がありました。当日は1,000食分を焼くことになるので、一度は給食を提供する当日と同じ条件で作ってみないと、おいしいものを提供できないと思い、みんなで試作をしようとなりました。
――試作をしたときの様子を教えていただけますか?
杉田:この点については、浅野さんにお話してもらったほうが良いですね。
浅野 祐子さん(以下敬称略):厨房のスチームコンベクションオーブンでブラウニー1,000食分を一気に焼くことは難しいので、何枚の生地を、何回に分けて焼けば効率良く作ることができるかを把握したいと思いました。そのためには材料の全体量に対し、オーブンで一度に焼く分量を割り出す必要があります。
1枚の生地からカットするブラウニーの数を18個、20個など何パターンか想定して、それに必要な分量を沖田さんと一緒に緻密に計算しました。また、試作をするうちに、材料全体の中でベーキングパウダーが占める割合が大きいために、焼き上がりがカップケーキのように膨らんでしまうことがわかりました。ブラウニーのしっとりとした生地を目指して、その点も気を付けて細かく分量を調整しました。
――他に気を付けた点はありますか?
浅野:ブラウニーには小麦粉と卵というアレルギー食材が使われています。厨房は仕切りがないので、アレルギー食材を扱う際は、他のメニューと接触しないようになど気を付けなくてはなりません。小麦粉が飛び散ってしまうことが懸念されたので、他の献立よりもブラウニーを先に完成させるように作業手順を考慮しました。
――学校給食現場で試作をすることはよくあるのでしょうか?
杉田:個人がそれぞれ自宅でやってみるという話は聞きますね。今回はお菓子の提供を今までしたことがなかったというのが大きいです。初めてのメニューを試作し、大きさや固さ、調理時間を確認する学校はあります。
――当日にこだわったポイントや給食時間の様子について教えてください。
浅野:子どもたちみんなが喜んでくれるように、粉糖(ふんとう)をハート型に振りました。また、どの子にも粉糖がかかったブラウニーを届けることができるように、ハートに含まれていない部分にも振るようにしました。
――杉田さんは現場力アドバイザーとしても活躍されていますが、みなさんは普段どのようなことを意識して現場力に取り組んでいますか?
※現場力アドバイザーとは、ソシオークグループ全体に改善文化を育て、現場力を「点」から「線」、「面」にする役割
杉田:「みんなが1分でも2分でも小休憩できる時間を作ろう」「みんなが重い物を運ぶ作業を少しでも減らせるようにしよう」など、そういう意識で仕事に取り組んでいます。
これはあくまで自分の考えですが、仕事を長く続けると慣れが生じてルーチン化してしまいがちだと思います。現場力に取り組むことで、毎日何か改善できるところを見つけようとするので、良い緊張感を持たせてくれています。
自分たちの現場はチームワークが良いと思っていて、私が異動してきて4年目になるのですが、ずっと事故ゼロで安全安心な給食をお届けできています。これは本当に、一人一人の協力、努力、相手を思う気持ちが素晴らしい結果に繋がったんだと思っています。
ちなみに、今回の現場力「不安解消、賞受賞」というタイトルは「不安解消」と「賞受賞」を掛けて韻を踏んだものにしました。葉隠勇進独自の現場力推進の取り組みとして「ユニークで賞」という賞があるので、自分たちも面白いタイトルを付けてみようと思ったんです。(笑)
――最後に、現場力に対する想いをお一人ずつお聞かせください。
荒川 ナパットさん:素晴らしい現場で働けていることに感謝しています!
沖田 真記さん:社員みんな能力も体力も違うのですが、お互いを思いやる気持ちを持って毎日取り組んでいます。子どもたちから「美味しいね」とか「今日全部食べたよ」って声をかけてもらえると、私たちのモチベーションも上がります。安全安心を守りながら、子どもたちに給食をもっと好きになってもらえるお手伝いができれば良いなと思って毎日頑張っています。
浅野:現場力に関しては、杉田さんがアドバイザーになったり、荒川さんがいろいろ教えてくださったりして、自分も積極的に取り組もうって意欲が湧いてきます。「あ、これやりづらいな」「こうしたほうが良いんじゃない?」などということも、現場力っていうものがあることで言えるようになっていると感じます。
杉田:何かを変えるということは大変ですし、最初は体力や気力が要ることだと思っています。でも現場力は自分たちのためにやるもの。ほんの少しでも改善すると身体が楽になったり、時間を作れたり、良いこと尽くしなんです。それが積み重なって、取り組むことが楽しくなってきたら、大きな力へと変わっていくと思っています。
「ちょっとやってみようかな」と、簡単なことから気軽にやってみる。ダメだったら戻す。これが大切だと思っています。