インタビュー

現場力インタビュー Vol.6「細菌検査キットの提出管理」

現場力作成者:株式会社てしお夢ふぁーむ サービス管理責任者 太田(おおた) 美智子(みちこ)さん

ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。

てしお夢ふぁーむでサービス管理責任者を務める太田美智子さん


ソシオークグループの一員である株式会社てしお夢ふぁーむは、障がい者の就労継続支援A型事業所として三重県にある桑名木曽岬農場で、水耕栽培の小松菜やリーフレタス・フリルレタス、またミニトマトを栽培しています。

今回ご紹介する現場力は、てしお夢ふぁーむのサービス管理責任者である太田美智子さんによる、「細菌感染や消化管疾患などを検査する細菌検査キットの提出管理」の取り組みです。「現場力で、ソシオーククレドに書かれているようなATM&2P(明るく・楽しく・前向きに、誇りと情熱を持って行動します)の現場を作っていきたい」と話す太田さんに詳しいお話を伺いました。

――今回の現場力は、障がい特性のため、毎月の細菌検査を期日までに提出するのが苦手なパートナー社員からきちんと提出してもらえるように働きかけた、という内容ですね。取り組み始めるきっかけは何だったのでしょうか?

てしお夢ふぁーむでは、毎月細菌検査の提出期日を決めていて、提出しないと農園に入ることができません。しかし、期日までに出してくれない人が多く困っていました。

提出されたキットも、「ケースの中に逆さまに入っている」とか、「名前・年齢・採取日が書いていない」とか、「シールが逆さまに貼られている」とか、ぐちゃぐちゃでした。

これでは送り先の業者さんに失礼だと思って、最初は私が直していました。しかし、それではパートナーさんたちのためにならないと思ったので、朝礼の時間などを使ってパートナーさん全員とどうしたらきちんと提出できるようになるか話し合ってみました。

――皆さんで話し合う以外にも、個別でのサポートなどもされましたか?

それでも出せない人には「どうして出せないの?」と個人的に話を聞きました。女性だと生理があって出せない時期もありますが、それを自分から言える人も少ないです。私から「この時期だと難しいか。じゃあちょっと提出日をずらしてみようか」と声をかけてあげると、後日出せるようになったり。あとは話していくうちに、食生活に偏りがあって便が出にくい人がいることも分かりました。そういう方には食生活のアドバイスをしたり、検査キットを少し長めに保管してその間に採取してもらうようにしたりと対応しています。

期日までに出せない人には、自分で郵便局に検体を持って行って、検査業者宛てに送ってもらいます。郵便局で郵送物の重さを量ってもらったり、郵送物を自分で出したりすることもパートナーさんたちにとっては社会勉強になるので積極的にやってもらいます。

――この現場力に取り組んで、何かパートナーさんたちに変化はありましたか?

検査キットの提出期限を守ることだけではなく、衛生面により気を使えるようになりました。お客様に向けて商品を作っているのだから自分たちの衛生管理はしっかりしなくてはいけない、という意識が強く持てるようになったと感じます。

――伝えるときに難しいと感じたことはありますか?

パートナーさんの中には、間違いを指摘されると過剰に反応してしまう人もいて、小さな間違いがあったときに指摘して良いのか、言わずに私のほうで直してしまったほうが良いのかと悩んだことがあります。みんなの前で、楽しい雰囲気の中「みんな気を付けてね」と私が言うと「自分も気を付けよう」と思ってくれて、次の月は同じ間違いをしなくなるということもありましたし、最終的には1対1でこっそり伝えるということもありました。

――太田さんは普段からパートナーさんとのコミュニケーションを大切にされていると感じました。

そうですね。毎日必ず一人一人と顔を見て話すようにしています。朝礼前に「おはよう」と挨拶して、手を消毒して手袋を渡すのですが、そのときパートナーさんが、前日や通勤中にあったことを私に話してくれます。みんな話したいみたいで、私の前に行列ができますよ(笑)。

あとはパートナーさんの性格や障がい特性によっても、色々なコミュニケーションの仕方をしています。特定の人や特定の状況でしかお話することができない特性の人に対しては、対話でのコミュニケーションが難しかったので、交換日記を始めてみました。

最初は「朝、自転車に乗ってきた」などとしか書いてくれなかったのですが、私が「今日は自転車での通勤寒かったでしょう」とコメントを書くと、「ありがとうございます」って返してくれたり。少しずつですが、色んなことを書けるようになってきて、以前よりコミュニケーションが取れるようになったと感じます。

――パートナーさんたちの現場力レポート作成の様子や、太田さんからの働きかけがあれば教えてください。

農作業の様子を見ながら、そのパートナーさんが困っていることをどうしたら解決できるか、時間をかけて一緒に考えます。すぐに解決策が出るわけではないので、日を改めながら何度も考え話し合っていくうちに、だんだんと解決方法がまとまっていくのですよね。それを現場力レポートにまとめてみよう、と声を掛けています。

あとは年に2、3回、全員で現場力レポートを書く時間を設けています。1人で全部書ける人は少ないので、私たち社員がサポートします。一方で、自分のレポートをどんどん書いて、周りの人に「こういうように書いてみたら」とアドバイスしてくれる人もいます。みんなで協力し合いながら作り上げていますね。

――パートナーさんたちの現場力への取り組みで、印象的だったエピソードはありますか?

現場力にとても熱心な人もいて、その場だけでなく、レポート用紙を1度自宅に持ち帰ってからも作成していました。完成したら職場のみんなにレポートを読んで聞かせてみて、修正が必要な部分は線を引いてもう一度書き直して…と、何度も推敲していました。みんなに読んでもらいたいという気持ちを強く感じ、現場力への意識の高さに驚きました。

――最後に、現場力に取り組むことによってどのような現場を作っていきたいか、太田さんの想いを教えてください。

ソシオークグループのクレドにある「ATM&2P(明るく・楽しく・前向きに、誇りと情熱を持って行動します)」な現場にしたいと常に意識しています。てしお夢ふぁーむでは、これに「笑顔」を加えて、みんなが毎日笑顔で働ける職場を目指していきたいです。