現場力作成者:葉隠勇進株式会社 堺市内にある小学校の給食現場 角野順子さん
ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
コロナ禍で黙食になってしまった給食。楽しいはずの給食が児童にとって暗いイメージになっていないかと気がかりだった角野さんは、朝礼で“食”についてお話しする機会をいただけないかと学校へ提案しました。食べることをもっと楽しんでもらいたいという思いから、クイズ形式や動画を使って給食のことを伝えました。
先生方と相談して取り組んだ食育のこと、それによって児童にどのような変化があったのか、お話を伺いました。
――朝礼で児童に向けて食育に関するお話をしたということですが、きっかけは何だったのでしょうか?
コロナが流行して以来、「おしゃべりしながら食べられなくて、給食が暗いイメージになっていないかな」と思っていました。児童が配膳室に給食を取りに来る時も、以前は「いただきます」と元気に挨拶をしてくれていましたが、今は声を出さずに入室しています。そんな様子を見て、給食の時間をもっと楽しんでもらえるような発信ができたらなって考えていたんです。
今年度は校長先生が食育に力を入れられており、朝礼で全学年に向けて講話をされていましたので、「私たちもお力添えできたら」という想いでお話を持ちかけ、お話する機会をいただけることになりました。
――朝礼では、どのような発信をされたのですか。
児童たちが普段見ることのできない調理の様子なら興味をもってもらえるかなと思い、楽しめるようにクイズ形式で紹介しました。題材に選んだのは、児童に人気で残食も少ないスパゲッティです。コロナ禍でビデオ配信をしているので、工程を写真に撮り、給食室の様子が少しでも分かるように工夫をしました。
――子どもたちに楽しんでもらうために工夫したことが他にもあれば教えてください。
クイズでは、児童が初めて知るだろうなということを出題しました。「スパゲッティを茹でる時に塩を入れるのはなぜでしょうか」や、「麺に大きな物差しを挿すのは、何のためでしょうか」などの問題を出しました。また、食中毒防止のために、出来上がったおかずの温度を測ることについても取り上げ、安全・安心に気を付けて作っているんだよとアピールしたつもりです。
それから、全校児童に話をするので、児童みんなが理解できる内容になるよう、言葉の選び方には気を配りました。
大変なこともありましたが、児童は興味津々でクイズを聞いてくれましたし、正解を発表した時には「やったー」「知らなかった」と楽しそうな声が聞こえてきたので、やってよかったなと思いました。次にスパゲッティが出たときにクイズのことを思い出して、楽しんで食べてくれたら嬉しいです。
――残食を減らすための取り組みにも力を入れているそうですね。
朝礼での取り組みの他に、校長先生と栄養士先生と「残食調査をしてみようか」という話になりました。大おかず、小おかずを食べ切ったらそのクラスにシールを渡して、表に貼ってもらうという形で調査をし、1カ月実施しました。
他にも、スプーンで食べる献立のときに、食材をすくいやすいように小さく切ることでも残食は減りました。おかずに合わせて児童が口に運びやすくなるような工夫を毎日考えていますし、社員みんなが同じ想いです。「おいしかったです」っていう声が増えたのも嬉しかったですね。やっぱり「食べてもらえることが私たちのご褒美」です。
――残食調査の取り組みをしてから、変化はありましたか?
シールが欲しくて食べてくれるクラスが結構ありまして、食べる楽しみを持ってくれたかなと感じました。残食が少なかったクラスに賞状も作って渡しました。
実際に残食がすごく減ったので、校長先生に報告すると「これからも残食調査を続けようか」と言っていただきました。こういうちょっとしたことで食べる意欲を持ってもらえるなら、こちらから発信することも大事なのかなと思っています。
――角野さんが現場力において大切にしていることは何でしょうか?
現場力が楽しみの一つになると良いなと思っています。現場力に触れて以来、誰かが困って作業しているのを見かけたら「こうする方が良いんじゃないか」と試行錯誤しています。そうすることで、働きやすくなりますし、やればやるほど現場力が楽しくなります。葉隠勇進の鈴木社長が「現場力は現場の栄養素」とおっしゃっていて、まさしくそうだなって思います。
また、改善を提案すると、すぐに受け入れてくれる社員には本当に感謝しています。それがないと、今回のような食育の取り組みもできなかったので、チームワークは大事にしたいと思っています。
学校給食は、「安全・安心に、事故なく」が一番ですし、それを通して学校と信頼関係を築くことが大事だと私は思っています。「おいしかったです」「いただきます」と元気に言ってくれる児童たちのために、これからも食べる楽しみを感じられるような取り組みをしていきたいです。