あしたばマインド

【現場力インタビュー】小さな水族館で節水!2歳児が楽しみながらSDGsを体験

仁平園長(写真左)と原田先生(写真右)

現場力作成者:株式会社あしたばマインド 明日葉保育園綱島園 原田(はらだ) 未玖(みく)先生・仁平(にへい) 由希子(ゆきこ)園長

ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。

保育の中で、子どもたちのSDGs体験に力を入れている綱島園。2歳児クラスの原田先生は、子どもたちに楽しみながら節水の意識を持ってもらおうと「小さな水族館」をつくる現場力を誕生させました。今回のインタビューでは、仁平園長にも加わっていただき、SDGsに関する現場力や、園で大切にしていることについて、お二人の想いを伺いました。

――今回の現場力が生まれたきっかけについて教えてください。

原田 未玖先生(以下敬称略):お外での水遊びが大好きな2歳児クラスの子どもたち。手を洗うときにも水を出しながら遊んでしまい、順番待ちの列ができてしまうことが多くありました。「お水もったいないから止めようね」とただ注意するだけではなく、楽しく節水意識を持ってもらうにはどうすれば良いかと考えていました。

まずはどのくらい水を使っているか可視化するため、洗い場にタッパーを置いてその上で手を洗ってもらいました。するとたちまち容器がいっぱいになってしまい、想像以上に水を使っていることが分かりました。

――なるほど。そこからどのように改善されたんですか。

原田:まずは、少しでも使用量を減らしてもらおうと、容器の中にアヒルのおもちゃを浮かべて「容器から水が溢れて、アヒルさんが落ちてしまう前に水を止めてね」と伝えてみました。しかし実際にやってみると、アヒルのおもちゃがプカプカ浮かぶのが楽しいようで、結局水遊びにつながってしまったんです。

試行錯誤した結果、最終的には園長先生が家から持ってきてくれた魚のおもちゃを発砲スチロールにくっつけて容器に浮かせ、水族館風のものを完成させました。

おもちゃを発泡スチロールに固定したことと、浮かぶものを大きくしたことが、子どもたちの視覚に訴える仕掛けとなり、子どもたちにとっても水を止めるタイミングが分かりやすくなりました。

発泡スチロールがタッパーの上まで浮いてきたら、水を止める合図です

仁平 由希子園長(以下敬称略):タッパーの大きさを変えたり、水に浮かぶものを変えたりと、原田先生はかなり試行錯誤していましたね。私や他の先生たちにも相談しながら、完成までに5~6回は作り直していました。

彼女は、どんなことに対してもすぐに改善する力があるし、そのサイクルも早いです。「この方法ではだめだ」と思ったらすぐに違うものを試したり、他の人の意見を取り入れたりして、より良いものを完成させていきます。「できないからやらない」のではなく「どうやったらできるか」をいつも一生懸命考えてくれていますね。

――「小さな水族館」ができて、子どもたちの様子はどのように変わりましたか?

原田:“水を使いすぎないように”という意識が芽生えてきたようです。隣で水を出しすぎている子がいたら「お水出しすぎたら、水族館がなくなっちゃうからおしまいにしよう」などと声を掛けてくれるようになりました。

実際に1回の手洗いで使用した水量を測定してみると、取り組み前の10分の1ほどになっていました。コロナの影響で頻繁に手を洗ってもらっていますが、2歳児クラス全体の1日の使用量では216ℓも削減することができました。

仁平:私は節水を意識できるようになっただけでも素晴らしいと思っていたんですが、原田先生はそこからさらに「水を削減するとCO2削減にもつながる」という話まで子どもたちに伝えていたんです。子どもが節水の先まで考えるきっかけにもなり、本当にレベルの高い現場力だと感心しました。

――他にもたくさんのSDGsに関する現場力に取り組んでいると伺っています。

仁平:ペットボトルのキャップを集め、途上国の子どもたちにワクチンを届ける活動に参加しています。楽しみながら寄付活動に参加できるよう、回収ボックスは、子どもに人気のキャラクターを用いたデザインにしました。

お家で集めたキャップを子どもが寄付してくれた様子は、毎回写真に収めています。その写真をポスターにして掲示すると、保護者様も喜んでくれました。

いろいろな仕掛けを作ったことで、毎日たくさんキャップが集まるようになり、開始から2週間でボックスがいっぱいになりました。今後は地域の皆さんにも活動を広げていきたいと思っています。

あとは、シュレッダーで裁断された紙の廃棄物を使って、再生紙を作る活動も行いました。子どもたちの手で紙をすいたり、再生紙に好きな色をつけたりして、楽しみながら取り組みました。さらに今は、その再生紙を使って手作りの時計も制作中です。

お散歩で拾った小枝を文字盤にして、保育園らしい温かみのある時計に

――先生たちはどんな雰囲気で現場力に取り組んでいますか?

仁平:開園して間もない頃は、普段取り組んでいることが現場力だと気付いていない様子だったので「それ現場力だから、レポートにして提出してみよう」と私から呼び掛けていました。今では先生たち同士で「それ現場力だね」「それSDGsだね」と声を掛け合うようになりましたね。

――お二人が現場力において特に大切にしていることを教えてください。

原田:園長先生から学んだ、「何よりも自分が一番楽しく過ごすこと」を大切に考えています。園長先生自身、どんな取り組みに対しても、すごく楽しんで盛り上げてくれるんです。園にそんな空気があるからこそ、みんなでどんどん意見を出し合えて、より良いものを作り上げていけるんだと感じます。

それに自分自身が保育を楽しめないと、子どもたちにも良いものを提供できないと思っています。そうやって楽しく取り組んでいく中で、園長先生が褒めてくださった「改善する力」が身に付いていったのだと思います。

仁平:課題が一つもない現場なんてないと思っています。問題に早く気が付いて、改善すればいいんです。そして改善するためには、徹底的に人と向き合って話し合わなければいけません。

綱島園の先生たちは、それを繰り返すことで力がつき、本当にたくましくなってきました。これからもみんなで楽しみながら、たくさんの現場力に取り組んでいきたいです。