現場力作成者:ソシオフードサービス株式会社 大田区内にある特別養護老人ホームの給食現場 調理師 吾妻 瞳さん
ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
大田区内にある特別養護老人ホームで調理師を務める吾妻 瞳さんは、1年に1回だけしか提供の機会がない「お正月の行事食」をスムーズに提供するため、当日の調理の流れが経験の浅い社員にも分かるようなマニュアルを作成しました。一人一人のタイムスケジュールや配膳の図などを載せて流れを確認できたことで、全員が余裕をもって作業にあたることができました。「円滑なコミュニケーションができる現場でありたい」と語る吾妻さんに、詳しくお話を伺いました。
――お正月の行事食を作るにあたり、調理の流れが分かるマニュアルを作成した経緯を教えてください。
元々お正月の行事食についてのマニュアルはあったのですが、内容は写真に対する大まかな箇条書きの説明だけでした。1年に1回しか提供しないので、新入社員や異動したての慣れていない人にとっては、当日の流れをイメージしづらく、作業に時間がかかってしまうという課題があったのです。みんながもっとスムーズに動けるように、より詳しい情報を盛り込んだ分かりやすいマニュアルにする必要があると思いました。
――行事食は普段の調理と、どういう違いがあるのでしょうか?
その行事のメイン料理に合わせるので、普段とは全く異なります。
例えばお正月に提供したおせち料理は、品数が多いため、お食事の作業工程がいつもより多くなります。さらに特別養護老人ホームだと通常食や刻み食、ミキサー食など入居者様ごとに食形態が異なるので、盛り付けをするお皿の数も通常の倍になります。
クリスマスであれば、ケーキのデコレーションに時間がかかるので、お正月とは反対にデザートを中心に時間配分を考えていきます。
――マニュアルの内容はどのような点に気を付けながら改善したのでしょうか?
私から「こういう流れだとスムーズに動けると思いますが、いかがですか?」と社員の皆さんへ提案し、意見を交わしながらマニュアルを改善していきました。
どの順番で作業にあたれば最も効率が良いか、食形態ごとに食数や調理、盛り付けにかかる時間を考慮してタイムスケジュールを組みました。また、行事食に慣れない社員が、迷わずに温冷配膳車(※)へお食事を入れることができるように、配膳図をマニュアルに載せました。
食材の飾り切りについては、仕込みのときに通常食、刻み食それぞれのやり方を直接教えました。こういうのもマニュアルで図示できれば良いのかもしれませんが、私の経験上、実際に習う方が上達しやすいと思ったんです。
※温冷配膳車…医療施設や福祉施設などで給食運搬に使用される。食事をトレイに乗せたまま運搬でき、かつ保温・保冷機能により最適な温度で提供できる。
――マニュアルを改善してどのような効果がありましたか?
前日に全員でマニュアルを見て流れを確認できたことで、私が思い描いていた流れで当日の作業を進めることができたので良かったです。温冷配膳車にお食事を入れるまでの全工程を、目標にしていた時間の5分前に完了させられたので、提供前の最終チェックにも誤配膳がないかなどを念入りに確認する余裕ができました。
2年目の社員にも「マニュアルが分かりやすくて、昨年よりも動きやすくなりました」と言ってもらえたので、来年も今回のマニュアルを参考にすれば対応できると思います。
――最後に、吾妻さんの現場力への想いを教えてください。
私自身が一番心掛けているのは「人に伝えたときにすぐ理解してもらえるか」「誰が見ても分かるようになっているか」ということです。そのために、普段から疑問に思ったことなどを率直に伝えてもらい、「じゃあこうしてみようか」と改善できる円滑なコミュニケーションを大切にしています。
今回のスムーズな行事食の提供は、現場のみんながいたからできたことだと思っています。