本部力作成者:株式会社あしたばマインド 運営マネジメントチーム 岡本 圭一さん
ソシオークグループの「本部力」とは
ソシオークグループの本社・本部で働く社員が業務の課題を自ら見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
保育園の運営は、保育理念(保育園がどうありたいかを示した考え方)・保育目標(子どもの育ちの理想の姿)のもとで行われています。明日葉保育園の保育理念は、「子どもの明日を育み、今日を支える」。保育目標は「自分も人も尊重できる子ども」「自分で考えて正しいことを選び取れる子ども」「心も体も健やかな子ども」「思いを適切に表現できる子ども」です。
この保育理念・目標に対して、保育士それぞれに想いがあることや、園数の拡大に伴い、園によって解釈が異なってしまうという課題が生まれました。運営マネージャーの岡本さんは、全園での共通理解を図るため「保育の見える化プロジェクト」を発足。園長を集めて1年間徹底的に話し合い、プロジェクトを進めました。10周年という節目で、明日葉保育園の保育とは何かを形づくる大切なプロジェクト。詳しいお話を伺いました。
――今回のプロジェクトが生まれたきっかけについて教えてください。
明日葉保育園は今年度、開園から10周年を迎え、園の数は全部で22園となりました。ここ数年は新規開園も続き、園が増えていく中で、明日葉保育園の保育理念・目標の解釈が園によって異なってきていました。そして解釈が異なることで、園によって保育の方針が違うということも招いてしまっていたのです。
これは人財育成の面で課題を生みました。例えば、配属された園で数年働いてから、他の園に異動になり異動先の園長の方針が異なった場合、また一から学び直さなければいけません。これでは社員も戸惑ってしまいますし、人財育成もなかなか進みません。
新任の園長も増えたこのタイミングで、全園で保育理念の解釈や方針を統一し、10年間培ってきた明日葉保育園のノウハウを全社員に共有しようと考えました。そして誕生したのが、今回の「保育の見える化プロジェクト」です。
――プロジェクトの活動はどのように進められましたか?
プロジェクトの成果物として、「あしたばの保育ガイド」という冊子を作り全園に配布しようと考えました。各園の園長に集まってもらい、グループワークを通して冊子の中身を作成していきます。
まずはグループで話し合いながら、保育理念、保育目標について、それぞれの解釈を共有しました。例えば、保育目標である「自分も人も尊重できる子ども」とはどのような子なのか、保育者はどのような保育をするべきなのかなど、細かいところまで徹底的に話し合い、イメージをすり合わせました。それを保育ガイドに明文化していったのです。
その後、その保育理念や目標に沿った保育とは、具体的にどのようなものかを年齢別に決めていきました。例えば1・2歳児の食育はどのように行うことが大切なのかを決めて、明記します。
ただの保育マニュアルではなく、理念に基づいたオリジナルのものを作りました。それに沿って保育を行うことで、新たに入社した保育士にも、明日葉保育園の理念と目標が浸透していくような作りを考えましたね。
――「あしたばの保育ガイド」の中身はどのようなものでしょうか?
年齢別に3段階に分け、それぞれの段階に応じた「生活習慣」と「遊びの事例」という二つの項目を設けました。例えば0歳児の場合、「生活習慣」に授乳・食事・排泄など、「遊びの事例」に手を使った遊び、全身を使った遊びなどが記されています。そしてそれぞれの保育において、大切にしたいこと・必要な保育環境、保育者の関わり方などが詳しくまとめられています。
保育士は、全てのお子様を入園時から担任として見られるわけではないので、配属されていきなり3歳児の担任になったりしますよね。でもこのガイドを見れば、この子たちは0歳~2歳までどのようなことを大切に保育が行われてきたか、イメージしやすいように作りました。
掲載する写真にもこだわりましたね。写真を見て、正しい授乳の仕方や抱っこの仕方が一目でわかるものを厳選しました。
――「あしたばの保育ガイド」はどのように活用されていますか?
主に、全体で行う年齢別研修と、園ごとに行う研修に使われています。特に園ごとに行う研修においては重宝されていますね。園で行う研修ってどうしても実務的なことが多くなるんです。例えばゴミはここに捨ててくださいとか、着替えはここに入れてくださいとか…。
そういう目先のことももちろん大切なのですが、それがお子様の育ちにおいてどこにつながっているのか、そういう深い部分まで教わるシーンってなかなかないですよね。そこで、保育ガイドを使ってそういう部分を補足しながら説明してもらうようにしています。
保育においてはそれぞれ想いがある分、同じ園の中でやり方が合わないということも出てくると思います。保育ガイドで明日葉保育園の方針を明文化することで、指導する側もされる側もやりやすくなるんです。
――現在はどんな本部力に取り組まれていますか?
今年度から新たに始めたのは、「感動プロジェクト」という取り組みです。具体的には、園見学にいらした保護者様への案内を見直したり、接遇を身に付けるための動画を作成したりしました。
保育園の登園初日、保護者様と初めて離れるときに、お子様はたくさん泣きます。それを見て、保護者様はとても胸を痛めるんですよね。でも月日が経つと、お子様から「保育園楽しかった」と言われる。先生から「今日は○○ちゃんこんなことできるようになりましたよ」と褒められる。保護者様にとってこれほど嬉しいことはないですよね。保育園ってそういう感動があふれる場所なんです。
そういう感動をもっともっと増やしていきたいと思って、始めたのがこのプロジェクトです。園長や保育士は、保護者様やお子様のためとなると、どんどんアイデアが出てくるんですよね。
――本部力に取り組むにあたって大切にしていることを教えてください。
運営マネージャー陣には「現場が最優先」ということを常に伝えています。言葉で言うのは簡単ですが、実際に行動で示すことが大切です。
マネージャーには、日々現場から悩み事や相談の連絡が入ります。それをいかに迅速に対応するか。現場は保育で忙しい中、本当に困っているから本社に問い合わせてきているのです。それなのに、なかなか返信がなかったら不安になりますよね。
現場との信頼構築のためにも、スピード感を持って対応することは常に意識していますし、それが本部力にもつながるのではないかと思います。