現場力作成者:ソシオフードサービス株式会社 愛知県西尾市内にある特別養護老人ホームの現場 責任者 吉戸 貴宣さん
ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
特別養護老人ホームで働く調理員さんたちが、食事提供の際に起きていた課題をシンプルなひと工夫で解決した今回の現場力。温冷配膳車の扉の外側に差し込む名札に加え、裏返した名札を内側に配置することで、食事のセット位置を一目で把握できるようにしました。
責任者の吉戸さんにお話を伺うと、この現場にはメンバー自ら課題を見つけて改善を続ける、現場力のサイクルが根付いていることが分かりました。
――現場力に取り組む前に感じていた課題について教えてください。
私が勤める特別養護老人ホームでは、入居者様だけではなく施設職員さんの昼食も提供しています。温かいものは温かく、冷たいものは冷たい状態で提供できる温冷配膳車を使っています。
温冷配膳車の扉の外側には名札が差し込まれていて、職員さんはそれを見て自分の食事かどうか確認した上で取り出しています。他の人の食事を誤って召し上がることがないよう、予め職員さんごとに食事の位置を決めています。
食事をセットする際には名札を確認していますが、温冷配膳車の段数は8段あり扉を開けた後にセット位置がわからなくなることがありました。そういうときは一度扉を閉じて名札を確認してからまた開けてセットしなければならず、時間がかかってしまっていました。
――この課題に対して、どんな取り組みをしたのでしょうか。
名札をもう1組作成し、裏返してカードポケットに差し込むことにしたんです。こうすることで扉窓の内側からも名札が見えるようになり、どの段が誰のセット位置か扉を開けた状態でもわかるようになりました。
――取り組みの結果、業務はどのように改善されましたか。
この改善は普段この業務に関わっているメンバーが率先して行ってくれたものです。私もたまにやることがありますが、そのときでも一目で食事のセット位置がわかって迷いません。とても効率がいいと感じます。開閉の回数が減っているので、庫内の温度変化も最小限に抑えることができていると思います。
――この現場力のほかに、取り組んでよかったと思う現場力はありますか。
食形態と塩分量、食事を提供する入居者様の人数が書かれた対照表をホワイトボードに書いています。これは新卒2年目のメンバーが作ってくれました。定期的に作るメニューは、何の材料が何gなのか分かりやすく数字で示してあるので、これを見るだけで誰でも分量と提供数を間違えることなく調理できます。
――配膳車の現場力と同じく、ぱっと見てわかるようにする取り組みなんですね。
ぱっと見て分かるとやりやすいし、間違わないですよね。ホワイトボードの取り組みは、入ったばかりのメンバーに見やすさを聞いたりして改良してくれて、今では誰が見てもすぐに正確に調理できるようになっていると思います。入居者様が増えたときも、食形態や分量を更新してくれています。私は調理の現場で20年以上働いていますが、ここまでわかりやすく一覧にしてあることってなかったです。本当に良い取り組みだなと思います。
――メンバーが率先して課題を見つけて、改善し続けているんですね。メンバーが課題意識を持って現場力に取り組めるのはなぜなのでしょうか。
「ここを改善したほうがいいんじゃないか」と誰かが気づいたら、メンバー間で相談しているんです。課題を取りまとめてくれている若手の栄養士のメンバーがいて、そのメンバーを起点にチームで相談して、みんなで協力して現場力を作るような形になっています。たとえば、パソコンを使えば解決できる課題なら、パソコン操作が得意なメンバーに力を貸してもらって解決するとか。
私はこの現場に一番最近配属されたのですが、その当時からどうやったら改善できるかをみんなで話して考えるような雰囲気でした。今は新卒や新しいメンバーも入って、さらにそれが加速したように思います。私はみんなの取り組みについていくだけという感じで、頼もしいですね。仕事がやりやすくなるだけでなく、やって良かったと思えるいい仕事につながるよう、これからもみんなで意見を出し合える雰囲気を保っていけたらと思います。